── 素材と曲線が描く、第二章のはじまり
今回もまた、Natale 氏は内装をすべて解体し、ゼロから設計をやり直すこととなった。これは彼にとって初の試みだったという。「これまでも、既存のプロジェクトに部屋を加えたり、ディテールを重ねたりすることはありましたが、今回はまさに“再構築”のチャンスだったんです。」
構造面での変更は比較的控えめで、2階部分をわずかに拡張・再構成し、4つのベッドルームと3つのバスルームを配置した以外は、キッチンやリビング、ダイニング、メディアルームといったガーデンレベルの空間に大きな移動はなかった。外部では、バルコニーのアイアン製手すりが新たに設えられ、フレンチドアはより簡素な一枚ガラスのデザインに変更。さらに、1階にはガラスブロックの小窓が4つ加えられている。

一方、内部空間は以前の面影をほぼ完全に払拭している。モールディングやパネル装飾、オーナメントはすべて取り払われ、直線的なエッジや角は、うねるようなラインとふくらみをもったフォルム、アーチ状の開口へと置き換えられた。全体を覆うのは、滑らかでシルキーな質感を持つ天然クレイ・プラスター(粘土系左官材)。この素材により、天井高のある空間には有機的で洗練された雰囲気が生まれ、まるで光に満ちたアリババの洞窟のような幻想的な印象すら与えている。
玄関のカスタムメイドのブロンズ製ドアを開けると現れるのは、家の“見せ場”でもある彫刻的な螺旋階段。アーチを描くように2階のプライベートゾーンへとつながるこの階段が、訪れる者を一気に非日常の世界へと導く。


床には、深い海緑やスモーキーグレーのうねり模様が美しいブラジル産の Patagonia Verde quartzite(パタゴニア・ヴェルデ・クォーツァイト)のスラブを採用。「この色合いがビーチを思い起こさせるんです。」と Natale 氏は語る。こうした素材使いは、家全体の抑制された色調の中にアクセントをもたらす、大理石の大胆なパターンや色彩によって補完されている。
「今回のクライアントは、この色も気に入っているようですが、大理石自体をもっと好んでいるようです。最初から“フルスラブのバスルームにしたい”と話していました。」


その言葉通り、パウダールームには深いグリーンが印象的な Verdi Alpi(ヴェルディ・アルピ)、2階のバスルームには翡翠のような Arcadia(アルカディア)が使用された。中でもTaylor 氏が惚れ込んだのが、Breccia Capraia(ブレッチャ・カプライア)。淡いピンクや濃紫、チャコールグレーの繊細なマーブル模様が白地に走る、イタリア産の華やかなカッラーラ・マーブルで、彼女はこの石を大量に輸入。
現在ではキッチンのカウンタートップやアイランド、バックガード、換気フードに用いられているだけでなく、メインバスルームでも、床面やシャワールームの内壁、そして大理石製のカスタム洗面台の背景壁としてふんだんに使われている。
── モダニズムの継承、素材と名作家具が織りなす時間の流れ
大理石と左官材と並び、今回の設計で軸となっているのがアメリカン・オークだ。明るい色調のこの木材は、全体に敷かれたヘリンボーンパターンの床材をはじめ、ミニマルなキッチン収納や、子ども部屋の造作家具にまで使用されている。息子のスタディスペースには、ラウンド型トラバーチンの引き手が付いた造り付けのデスクが備えられ、その上には1931年に Gio Ponti(ジオ・ポンティ)がデザインした〈Bilia(ビリア)〉のテーブルランプが置かれている。組み合わされている椅子は、Grant and Mary Featherston(グラント&メアリー・フェザーストン)による1960年頃の〈 Scape(スケープ)〉チェア。時代は異なるが、どちらも20世紀モダニズムの精神を体現したプロダクトであり、この家に通底する美学に呼応している。



その他の家具も、空間の年代を超えた魅力を支えている。リビングには、(ウォーレン・プラットナー)のスチールロッド製ラウンジチェアや、ウラジミール・カガンの流れるようなフォルムの〈サーペンタイン〉ソファが置かれ、ダイニングには、ララ・ボヒンクのスペースエイジな〈オービット〉チェアや、マルコ・パニョンチェッリによるUFOのようなペンダント照明〈マサイ〉が登場。どれも、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの時代のような「永遠の若さ」や、スリークでグラマラスな世界観を今に伝えている。
◀︎ 前編も読む
INTERIOR DESIGN Magazine, November 2024
English text: Peter Webster
Photography: Anson Smart