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        2025年6月26日

        star turn | シドニーで進化する、ハリウッド・エレガンスの新解釈(前編)

        訳:シドニーにて、Greg Natale(グレッグ・ナターレ)が、自身が過去に手がけた邸宅を再訪。彼の代名詞ともいえる Hollywood Regency(ハリウッド・リージェンシー)様式を、より洗練されたスタイルへと昇華させながら、その魅惑的な華やかさはそのままに、新たな空間美を描き出している。 (所在地:オーストラリア・シドニー)

        ── シドニーに息づくスウィング時代の美意識と、記憶の再構築


        世界恐慌にあえいだ1930年代、アメリカの人々は現実から逃れるように、Fred Astaire(フレッド・アステア)や Ginger Rogers(ジンジャー・ロジャース)に代表されるミュージカル映画の中の華やかで洗練された世界に没頭していった。これらの美術演出が際立つ映画は、ストリームライン・モダン様式の建築を世界的に広め、丸みを帯びた縁取りや滑らかな表面、曲線を多用したフォルムといった特徴は、ベイルートからブエノスアイレス、そしてシドニーの住宅や商業建築にも広がっていった。


        オーストラリア・シドニーの高級住宅街ベルビュー・ヒルに建つ、スウィング時代に建てられた2階建ての邸宅もまたその例だ。外観は、滑らかな曲面をもつスタッコ仕上げで、どこか「クリーミーなエレガンス」を今も残している。この家の改修を手がけたのは、デザイナーのGreg Natale(グレッグ・ナターレ)。実は、彼にとってこの家を手がけるのは今回が2度目となる。


        12年前、Natale 氏率いるデザインスタジオは、元々2世帯向けだったこの住宅を約335平米の単世帯住宅へと大規模に改修していた。構造的な変更も伴い、サンケンリビング(床が一段下がったリビング)を新設し、フレンチドア越しに出られるジュリエットバルコニーを複数設けた。インテリアデザインでは、当初から残されていたテラコッタ屋根に着想を得て、1930年代後半に流行した映画美術にルーツを持つ「 Hollywood Regency(ハリウッド・リージェンシー)」様式を採用した。


        「内装はモノトーンに鮮やかなアクセントカラーを差し込んだものでした」と Natale 氏は振り返る。たとえば、白黒のチェッカーボード大理石床、赤く塗られたチッペンデール風のシノワズリ調ダイニングチェア、青と白のドラゴン柄の壺など。さらに、木製のパネル壁やクラウンモールディング(天井との境目の装飾)も随所に取り入れられ、空間は直線的で構築的な印象にまとめられていた。


        この視覚的にも印象的なプロジェクトは数多くのメディアに取り上げられ、Natale 氏のスタイルを象徴する代表作のひとつとして知られるようになった。


        ── 曲線美とギリシャの風、住まい手の想いが導いた新たなデザイン

        2020年、社交界でも知られる Eleni Taylor(エレーニ・テイラー)が、この邸宅を自身と彼女のふたりの子どもたちのために購入した。「彼女にとって、この家はいくつもの条件を満たしていました。」と Natale 氏は語る。


        「広すぎず、立地も理想的で、プールもある。」


        新たなオーナーである Taylor 氏は、天井の高さや全体的な雰囲気には魅力を感じていたものの、インテリアにはもう少し柔らかく、フェミニンな印象を求めていた。特に、外観に見られる曲線美を室内空間にも反映させたいと考えていたという。


        ギリシャ系のルーツを持つ Taylor 氏が思い描いていたのは、Cycladic architecture(キクラデス建築)に見られるような、削ぎ落とされた流麗な空間。「それまで、そういったスタイルのプロジェクトを手がけたことはありませんでしたが、Eleni から連絡をもらったんです。」と Natale 氏は振り返る。


        「私たちのチームと話をする中で、彼女は“理想のイメージを実現できる”と確信してくれた。それで正式に依頼を受けました。」



        後編に続く ▶︎



        INTERIOR DESIGN Magazine, November 2024

        English text: Peter Webster

        Photography: Anson Smart