
── 田園の中のプレジャードーム、贅を尽くした設え
一歩足を踏み入れれば、この空間が素朴なだけの施設ではないことは一目瞭然だ。ゲストハウスの玄関には、図柄も形も不揃いな azulejos(アズレージョ)がモザイク状に貼られ、偶発的な構成が抽象画のような壁面を演出している。2階建てのエンターテインメント・パビリオンには、大開口のスライディングガラス壁が設けられ、バーベキューエリアやフラッグストーンのテラス、石張りのインフィニティプールへとつながる。特に陽が落ちる時間帯には、この一連の空間が見事なまでに眺望の舞台装置となるのだ。

内部の全長約35mにもおよぶ大空間は、まるで現代版プレジャードーム。中央の暖炉を挟んでソファが2グループ配置されたラウンジエリアには、ブラジルのミッドセンチュリーデザインを代表する Sergio Rodrigues(セルジオ・ロドリゲス)や、Bernardo Figueiredo(ベルナルド・フィゲイレド)の作品が置かれており、その先にはクッション付きのベンチとテーブルを複数備えたダイニング、ビリヤードテーブルのあるゲームコーナー、ホームシアターなどが続いている。さらに、グルメ仕様のキッチンやガラス張りのワインセラー、そして2階にはスパ、マッサージルーム、ジムまで完備されている。

このプロジェクトは、自然・文化・人の営みが有機的に交差する場所として、機能性とアート性を両立させた空間デザインの好例と言えるだろう。
── 静と動が交差する、もうひとつの贅沢
ゲストハウスもまた、パビリオンに劣らずラグジュアリーな設えとなっている。14室のスイートはすべて、ガラス張りのバスルームと目隠しの施されたプライベートガーデンを備え、客室の両翼に広がるのは木々や草花が植えられた砂利敷きの中庭。その中心には静謐な水盤が配され、風景に落ち着きをもたらす。


訳:ゲストルームには、砂漆喰の壁、炭化処理を施したパイン材の天井と造作、麻のラグが柔らかな奥行きを与える。Marcelo Magalhães による枝を使ったテーブルランプも空間に自然なアクセントを加える
客室の壁は砂を混ぜた左官仕上げで、パビリオンと同様、上質な家具が並ぶ。一部は Casas 氏自身がデザインしたもので、さらに、サンパウロを拠点に活動するデザイナー、Marcelo Magalhães(マルセロ・マガリャンイス)による作品も採用されており、廃材となった枝を再構成した彼の家具は、この場の自然美と絶妙に響き合っているのが見て取れる。

訳:植栽に囲まれたバスルームには、Casas 氏がデザインした洗面台などが設置されている
また昼間の姿もさることながら、この複合施設が真に映えるのは日が暮れてからと言えるだろう。グラウンドレベルに埋め込まれたスポットライトが外壁の石肌を浮かび上がらせ、その質感をドラマチックに際立たせる。室内は天井に設けられた間接照明により柔らかく包まれ、テーブルランプやフロアランプがさらに温かみのある明かりを添える。

そして暖炉に火が灯り、夕暮れのなかでリュジターノ馬たちが優雅に歩みを進める頃、訪れるゲストは、太古の祖先が壁画の馬に見出したであろう本能的な畏敬の念を感じるに違いない。
◀︎ 前編も読む
https://www.materialbank.jp/all/curated-collections/
INTERIOR DESIGN Magazine, Fall 2022
English text: Marisa Bartolucci
Photography: Fernando Guerra