
Elkus Manfredi Architects turns an early 20th–century manufacturing facility near Boston intoWatertown Exploratory Labs, a center for life-sciences innovation, community, and sustainability
「Elkus Manfredi Architects」は、ボストン近郊にある20世紀初頭の製造施設を、ライフサイエンス分野のイノベーション、コミュニティ、サステナビリティの拠点となる〈Watertown Exploratory Labs〉へと生まれ変わらせた。
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── 工場からライフサイエンスの拠点へ
マサチューセッツ州ウォータータウンにある旧「Western Electric Company」本社は、最先端のライフサイエンス研究施設に生まれ変わるような建物には見えなかった。
ボストンから西へ約16kmに位置するこの1931年築の建物は、もともと重工業製造施設として建設され、直近では保険会社のオフィスとして利用されていた。アールデコ調の外観は残されていたものの、内部には当時の意匠はほとんど残っていなかった。
しかし、その規模の大きさ、堅牢な構造、そしてハーバード大学やMITに近い立地に着目した開発会社「Spear Street Capital」は、地元設計事務所「Elkus Manfredi Architects」を起用。建物をライフサイエンス分野の研究開発拠点〈Watertown Exploratory Labs(WELL)〉へと再生するプロジェクトを進めた。


Elkus Manfredi 氏は、この挑戦に十分な実績を持っていた。ヒューストンの〈Texas Medical Center〉内にある約23,000㎡の研究施設〈TMC³ Collaborative Building〉や、ボストンのアールデコ建築をコミュニティ施設へと再生した「401 Park」などを手掛けてきた同社は、研究施設に求められる高度なエンジニアリングと、人々をつなぐキャンパスづくりの両方を理解していた。
「私たちがつくろうとしていたのは、建物ではなくコミュニティでした」と、Manfredi 氏のプリンシパルである Elizabeth Lowrey 氏は語る。
大学や企業キャンパスとは異なり、WELLには既存のアイデンティティが存在しなかった。そのため設計チームはゼロから場所の個性を構築する必要があった。そこで着目したのが建物そのものが持つ歴史と地域性だった。
さらに敷地は Watertown-Cambridge Greenway 沿いに位置し、多くの利用者が自転車で通勤することも想定された。周辺環境や利用者像を分析した結果、設計チームは自然光、屋外とのつながり、そして建物の歴史性を取り戻すことが重要だと考えた。
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しかし、Lowrey 氏が初めて訪れた時、その空間はまったく逆の状態だったという。「暗くて閉鎖的でした。映画に出てくる保険会社のオフィスのように、キュービクルと長い廊下が並んでいました。」
1990年代に設けられたアトリウムも存在したが、建物中央に埋もれており、その存在に気づくことすら難しかった。そこで、Manfredi 氏は約48,000㎡の建物を全面的に改修し、アトリウムを建築の中心へと据えた。エントランスから見える位置までアトリウムを拡張し、1階には新たな窓と中庭へ開くガレージドアを設置。さらにメインエントランスを通り側から自転車道側へ移し、利用者を迎える前庭空間も整備した。
「建物を裏返したような感覚でした。以前は内向きだった空間が、今では自然へと開かれ、光が建物の奥深くまで届いています」と Lowrey 氏は振り返る。
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── 研究者をつなぐ “タウンスクエア(Town Square|町の広場)”
LEEDゴールド認証※ の取得にも貢献したこれらの改修の中心には、アトリウムを囲む約2,500㎡の共用空間がある。ワークラウンジ、カフェ、フィットネスジム、カンファレンスセンターで構成されるこのエリアは、単なる福利厚生施設ではない。
「コーヒーを飲む場所や運動する場所を用意することが目的ではありません。ここはすべてのテナントが共有するタウンスクエアなのです」と Lowrey 氏は説明する。都市計画の考え方を応用し、人々を自然と引き寄せる“磁石”のような場所をつくり出した。明るいアトリウムラウンジと隣接するカフェはその象徴である。


「人が集まりたくなる中心ができれば、その場所に鼓動が生まれます。」
異なる企業の研究者たちが偶然出会い、新しいアイデアや協業が生まれることも期待されている。施設全体には、そのアイデンティティを形づくるアートも配置されている。ロビーには素粒子の崩壊パターンや宇宙、植物をモチーフにした巨大な壁画が描かれ、ラウンジには空を描いた円形アートが設置されている。
また、アールデコと工業建築へのオマージュも随所に見られる。曲線を描くバンケットシート、フルート加工された木柱、リブガラス、幾何学模様のステンドグラスなどが1930年代の雰囲気を想起させる。



一方で、その周囲には最先端の研究施設が配置されている。最大2,300人を収容可能な〈WELL〉には、スタートアップから大企業まで約10社が入居する予定だ。
研究施設としての機能を支えるため、Manfredi 氏は建物内部に新たなインフラを構築した。電力、換気、排気、水処理、化学廃棄物処理といった設備を収容する4層構成のユーティリティ棟を増築し、研究から製造までを一貫して行える環境を整備している。
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Lowrey 氏は、ここで働く研究者たちの日常をこう想像している。
朝は同僚とコーヒーを飲み、昼にはジムを利用し、夕方には建物全体のイベントに参加する。それはまるで大学キャンパスのように、快適で活気にあふれ、未来への可能性に満ちた場所なのである。

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※ LEEDゴールド認証とは、米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用する世界的な環境性能認証プログラムにおいて、最高ランクのプラチナに次ぐ高い環境基準を満たした建物・空間に与えられる格付けのことを指します。
本記事は、「INTERIOR DESIGN」による『transformative power』を、日本語でご紹介する記事です。
INTERIOR DESIGN Magazine, March 2025
english text: rebecca dalzell
photography: eric laignel
firm: Elkus Manfredi Architects|site: Watertown, Massachusetts, USA