
From memorials to gardens, these spiritual spaces share a common language of atmosphere and attention rather than a fixed typology or faith.
追悼施設から庭園まで。これらのスピリチュアル空間に共通するのは、固定された類型や信仰ではなく、「雰囲気」と「注意」という共通言語である。
── 光がとどまり、時間がゆるやかに流れる場所。
空間をスピリチュアルたらしめるものは何か。それは必ずしも明示的な宗教表現ではない。実際、多くの場合そうではない。静けさであったり、光であったり、あるいはその場がただそこに佇む私たちを包み込み、存在すること以外何も求めないように感じられる在り方であったりする。
精神性は、象徴や説教として提示される必要はない。建築が人の歩みを緩やかにし、時間を刻ませるその在り方のなかに見出される。また、悲しみや安らぎ、畏敬や癒しといった感情を体験することを可能にする空間のありようのなかにも宿る。
本特集では、A+Awardを受賞した7つのプロジェクトを通して、「精神のために設計する」とは何かを探る。各プロジェクトは、素材的アプローチ、空間的操作、感覚的体験など、それぞれ異なる方法論を採る。しかしいずれも、空間をより意図的かつ神聖なものとして体験することへと私たちを導く。
これらは単一の建築類型に属するものではない。教会やモスク、寺院に限られるわけでもない。追悼施設、庭園、ホール、センターなど多様である。それらを結びつけるのは、機能や信仰ではなく、「雰囲気」と「注意」という設計姿勢である。
建築における精神性は、信仰の枠内にとどまらない。空間が私たちの歩みを緩め、感覚をひらき、自身を超えた何かと接続させるその作用のなかに息づく。本コレクションの7事例は、レールや砕石、紙や漆喰、水や光といった素材によってもスピリチュアルな空間が成立し得ることを示している。重要なのは、沈黙、動き、注意をどのようにフレーミングするか、その配慮のあり方である。
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Case 01:
Rails of Memory(設計:Blaising Borchardt Studio|フランス・リヨン)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 審査員賞|宗教建築・追悼施設部門


リヨンではかつて、列車がアウシュヴィッツへと人々を移送した。《Rails of Memory》は、その歴史を距離と重量によって可視化する。全長3,850フィート(約1,173メートル)のレールは、リヨンから収容所までの道のりのちょうど千分の一を表す。
実際の鉄道資材(レール、枕木、砕石——)を再利用し、記憶を物質へと定着させる。設計者は「移動」を「哀悼」へと転換することを意図し、長く静かなプロセッション(行列)を創出した。来訪者が歩む道には、壁も象徴もない。ただ足元の地面のみがある。そこに身を置くこと自体が記憶を神聖なものへと変えていく。
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Case 02:
Ritual Space(設計:Geomim|トルコ・ボドルム)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 審査員賞|ウェルネス&スパ部門

《Ritual Space》は、その名の通り建築を儀式へと変換する。細い回廊と沈床式の中庭が連続し、身体の速度を落とし、意識を内側へと向ける構成である。版築の床と漆喰壁は土の色調を反映する。地下の暗がりへと光を導くトップライトが設けられ、来訪者を陽光の差すテラスへと導く。中央の瞑想パビリオンは、セマーの旋回運動を想起させる円形フォルムで立ち上がる。陰影、テクスチャー、光が相互に作用し、訪れる者を内省へと導く計画である。
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Case 03:
The Breeze Hall(設計:SHISUO Design Office|中国・上海)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 審査員賞|文化パビリオン部門

SHISUO Design Office は、フェンスに囲われた林地を《The Breeze Hall》へと再生した。かつて隔てられていた樹木は、開かれた芝生の中で、翼のような庇をもつ鉄骨パビリオンを支える。全長42メートルの大空間には、屋根を通して穏やかな風が引き込まれる。雨水は水盤に集められ、蒸発冷却によって空気を和らげる。漆喰壁は温もりを帯び、光は一日のなかで移ろう。夕暮れ時、枝越しに光るファサードは、神聖な静止と日常への回帰のあわいを保つ。
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Case 04:
Garden for the Eyes(設計:c+d studio|中国・上海)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 審査員賞|rchitecture + Art 部門


《Garden for the Eyes》は、江南庭園を抽象化した空間である。ほぼ全面が手漉き和紙によって構成され、その繊維は自然の質感を思わせる。柔らかく拡散する光が壁面をなぞり、精緻に配置された額景や水墨画へと視線を導く。開口部は「目のための窓」として機能し、視覚のリズムを制御する。一歩ごとに新たな構図が現れ、立ち止まることで思考がひらく。ここでは「見る」という行為そのものが静かな儀式となる。
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Case 05:
The ET-302 Memorial(設計:Alebel Desta Consulting Architects and Engineers|エチオピア・ギンビチュ)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 一般投票賞|宗教建築・追悼施設部門


《ET-302 Memorial》は、不在、顕現、癒しへと至るプロセスを空間化する。主動線は墜落直前の6分44秒をたどるように構成され、傾斜した4つのコンクリート体へと導く。それらは事故地点を示し、エチオピアの岩窟建築を想起させるスケールと質感をもつ。機体の窓を思わせるプレートには、犠牲者の名が刻まれる。地下空間と屋外空間が静かな内省を促し、岩庭や日陰の歩道、円形の埋葬地が悲嘆の重みを受け止める。歩みは喪失から記憶へ、そして再生へと物語を紡ぐ。
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Case 06:
Diffuse Mirror(設計:António Costa Lima Arquitectos|ポルトガル)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 審査員賞|Architecture + Light 部門

ダムの縁に建つ《Diffuse Mirror》は、静かな水面へと伸びる桟橋のように立ち上がる。来訪者は松材の柱を踏みしめ、粗い円錐状の木片で囲われた礼拝堂へ入る。狭い隙間から差し込む光は床に散り、時間や季節とともに変化する。一つの窓は水面へ、もう一つは空へと視線を導く。「Agape」の文字を刻んだ十字架が空間を支点として定着させる。光に加え、音、匂い、触覚が身体を鎮め、思考をひらく。
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Case 07:
Water Pavilion, Longqiyuan(設計:The Design Institute of Landscape & Architecture, China Academy of Art|中国・温州)
▶︎ 受賞:13th Architizer A+Awards 一般投票賞|Architecture + Environment 部門

温州・龍棲源景勝地の谷間に位置する《Water Pavilion》は、三つの水域の間の尾根に建つ。保存された樹木の木陰を抜け、三枚の曲面屋根によって構成される空間へと至る。各屋根は異なる水面へと開き、持ち上がって入口を形成し、低く沈み込んで水面へと接する。細いスリットから光が差し込み、移動とともに表情を変える。足元には反射が揺らぐ。どの角度からも、水、影、時間が織りなす新たな構図が現れる。
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本記事は、「Architizer(アーキタイザー)」による『Where Light Lingers and Time Slows: Atmosphere as Structure in 7 Spiritual Spaces』を、日本語でご紹介する記事です。
Architizer Magazine
English text: Ifeoma Nduka
About Ifeoma Nduka:An architect and freelance architectural writer, Ifeoma brings experience in design and project management to her work. She explores the intersection of design, functionality and storytelling, translating architectural concepts into compelling narratives while offering insights on trends, projects and industry innovations.
※本記事は、Material Bankのグループメディアである「Architizer(アーキタイザー)」の記事を翻訳・編集したものです。実際の英文記事はこちら。

