
── サステナブル建築が示す、次世代の設計指針。
Architizer A+ アワード受賞作に見る、これからの建築の指針となる持続可能なデザイン。
Architizer A+Awardsは、世界中の優れた建築、ランドスケープ、都市計画、プレイスメイキングのプロジェクトを称えるものである。近年のアワードでは、最もカーボン効率に優れ、環境方針と整合し、気候変動に配慮した設計図、アイデア、そして完成建築が数多く注目されてきた。
A+Awardsのサステナビリティ部門における受賞作、ファイナリスト、ショートリスト作品を振り返ると、いくつか際立った共通点が見えてくる。審査員と一般投票の双方において高く評価されたのは、柔軟性と適応性を備え、多様な影響や用途を受け入れ、周囲の環境が建築の形態を主導することを許容するマスタープランであった。また、本コレクションに含まれる多くの事例では、屋内と屋外、人為的な世界と進化によって形成された自然環境との境界が曖昧にされ、人が自然の中に没入する感覚が重視されている点も共通している。
今回は、世界最大級の建築アワード「Architizer A+Awards」より、過去のサステナブル部門受賞作をピックアップした。
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Case 01:リュブリャナ湿地自然公園 生物多様性・杭上住居解説センター
(設計:Atelje Ostan Pavlin|/スロベニア・リュブリャナ)
▶︎ 受賞:第12回 A+Awards サステナブル文化建築部門 ポピュラーチョイス受賞


Atelje Ostan Pavlinによる〈リュブリャナ湿地自然公園 生物多様性・杭上住居解説センター〉は、スロベニアの首都にとって重要な建築的資産である。先史時代の杭上住居が残る自然豊かな湿地に建ち、この解説センターは、地域の地質的・進化的な歴史、動植物相を来訪者に伝える役割を担う。敷地に対して押し付けるのではなく、場所の特性を補完する「生きた博物館」として機能している。
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Case 02:Amazon HQ2 メトロポリタン・パーク(設計:ZGF Architects|米・バージニア州アーリントン)
▶︎ 受賞:第12回 A+Awards サステナブル商業建築部門 ポピュラーチョイス受賞



着工当時、世界最大規模のLEED Platinum v4認証プロジェクトであった〈Amazon 第2本社 Amazon HQ2 メトロポリタン・パーク〉は、100%再生可能電力、高効率HVAC、採光計画によってエネルギー使用量を24%削減している。コミュニティガーデン、子どもの遊び場、自転車レーン、地上階の公共的な空間が、都市環境と地域社会の一部としての役割を強化している。また、マスタープラン策定にあたり、長期にわたる市民との対話が行われた点も特徴である。
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Case 03:マンハウゼン島リゾート「ツインタワー」(設計:Snorre Stinessen Architecture|ノルウェー・ステイゲン)
▶︎ 受賞:第12回 A+Awards
建築+環境部門 審査員賞/サステナブル・ホスピタリティ部門 ポピュラーチョイス受賞


かつて漁業を支えた石炭貯蔵施設の跡地に建つ2棟のタワーは、伝統と現代性を融合させている。焼杉の外装は、この土地の過去を想起させると同時に、「ネガティブスペース」の効果によって建築を際立たせる。場所と人の歴史を尊重する素材選択と、エネルギー自立という未来志向の技術が、自然環境を損なうことなく共存している。
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Case 04:Where the Pollinators Are(設計:Didier Design Studio|米・ペンシルベニア州)
▶︎ 受賞:第12回 A+Awards サステナブル・ランドスケープ/プランニング部門 審査員賞


ミツバチをはじめとする送粉者の急激な減少を背景に、本計画は地域の生態系を自然なバランスへと回復させることを目的としている。単一栽培が支配していた土地を再構成し、共存・相互支援する種を導入することで、生物多様性が開発の基盤であるべきだという理解を体現している。
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Case 05:CUCADELLUM:ティビダボ遊園地ケーブルカー(設計:MIAS ARCHITECTS|スペイン・バルセロナ)
▶︎ 受賞:第11回 A+Awards サステナブル交通プロジェクト部門 ポピュラーチョイス受賞



全電動化されたケーブルカーは、輸送能力を120席から252席へと倍増させ、所要時間を最大3分まで短縮した。車両デザインは移動そのものを「体験」として位置づけ、パノラマビューやタッチスクリーンによる情報提供を通じて、地域理解を促している。
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Case 06:Echo TU Delft(設計:UNStudio|オランダ・デルフト)
▶︎ 受賞:第11回 A+Awards サステナブル文化・教育施設部門 ポピュラーチョイス受賞



学生数や教育ニーズの変化に応じて更新可能な設計により、大規模で環境負荷の高い改修工事を不要とする建築である。この「将来対応性」こそが、真の意味でのサステナビリティであると示している。
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Case 07:段ボール成形による展示空間(設計:LUO Studio|中国・上海)
▶︎ 受賞:第11回 A+Awards サステナブル・インテリア部門 ポピュラーチョイス受賞



LUO Studioによるこの展示空間は、素材選択そのものが強いメッセージとなっており、軽量で柔軟性の高い段ボールを用いることで、展示空間における輸送と施工という、炭素排出の大きな要因を大幅に削減している。展示終了後は解体・移設・再利用が可能であり、使い捨てが常態化してきた展示デザインの分野に対する、明確な代替モデルを提示した。
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Architizer Magazine
English text: Martin Guttridge-Hewitt
About Martin Guttridge-Hewitt:Martin Guttridge-Hewitt is a freelance journalist based in Manchester, UK. His work has appeared on platforms including BBC, the Guardian, Metro and VICE, and regularly touches on culture, climate, sustainability, social justice, design and creative industries. In addition to independent work, he has a retained role as an environmental writer at Public Sector News Network and editor at the interdisciplinary annual print magazine, Design Exchange.
※本記事は、Material Bankのグループメディアである「Architizer(アーキタイザー)」の記事を翻訳・編集したものです。実際の英文記事はこちら。

