
—— 制約条件を可能性へと転換する、3Dプリント住宅の試み
ルクセンブルクは、3Dプリント住宅の時代へと正式に足を踏み入れた。幅約3.5メートル、奥行き約17.7メートルという細長いプロポーションの《Tiny House LUX》は、延床面積約47㎡という極めてコンパクトなスケールの中に、革新性、持続可能性、そしてデザイン性を凝縮している。
本プロジェクトは、ICE Industrial Services の一部門である Coral Construction Technologies によって開発され、ODA Architects が設計を担当した。これは単なる実験的住居ではなく、ヨーロッパでも特に住宅価格が高く、敷地条件が厳しいルクセンブルクにおいて、新たな住宅モデルを提示する大胆なプロトタイプである。


年間約7,000戸の住宅供給が必要とされる一方で、実際にはその半数程度しか建設されていないという同国の住宅事情を背景に、本計画は従来の建設手法では活用が難しかった、細長く不整形な空き地に着目する。「使われない隙間を、住まいに変えられないか」という問いが、《Tiny House LUX》の出発点となっている。




── デジタルファブリケーションと地域素材が生み出す、実装可能な建築プロトタイプ
ODA Architects の Bujar Hasani(ブジャール・ハサニ)氏は、ニーダーアンヴェン自治体と協働し、仮設的な箱ではなく、ルクセンブルクの厳しい建築基準を満たす恒久住宅の実現を目指した。設計の実装にあたり、現場での3Dコンクリートプリントを専門とする Coral Construction Technologies、および Georgios Staikos と協働。モバイル型ロボットプリンターを用い、設計モデルを精密なツールパスへと変換し、現地で層状に出力した点が特徴である。多くの3Dプリント住宅が輸入材料に依存する中、本計画では近隣のバッチングプラントから供給される通常のローカルコンクリートを使用し、輸送による環境負荷を低減している。


施工自体は約1週間、基礎から仕上げまで含めても4週間で完了。シャワーニッチや壁掛けトイレ用の空間など、一部の建築的ディテールは壁体と一体でプリントされており、追加加工を必要としない高い精度を実現している。また、住宅はコンクリートスラブではなく、スクリュー基礎で支持された木製プラットフォーム上に設置され、将来的な解体・移設も視野に入れた循環型設計が採用された。内部空間は前後に抜ける視線計画と造作家具により、実面積以上の広がりを感じさせる構成となっている。鉱物系断熱材、太陽光発電、床暖房システムなどを組み合わせたこの住居は、小規模でありながら高い環境性能を備え、先端技術が社会的・環境的課題に応答しうることを示している。


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