
── 現代住宅を形づくる力。
Architizer A+ アワード受賞作に見る、美と機能を備えた住まいの進化。
優れた住宅は、日常を変革する力をもつ。Architizer の「Architizer A+Awards」プログラムでは、住宅プロジェクトが、美しさと機能性を生活空間のなかで両立させている点で際立っている。小規模な都市型アパートメントから広大な住宅団地に至るまで、これらの受賞プロジェクトは、多様な住宅ニーズに応える建築家たちの柔軟性と創造性を示している。スケールもコンテクストも異なるこれらの作品を特徴づけるのは、住まう人々の日常の質を向上させる能力である。
「Architizer A+Awards」受賞の住宅プロジェクトは、地理的な境界を超えるデザインの力を示している。バルセロナの開放的な眺望から、コスタリカの穏やかな自然環境まで、各プロジェクトはその土地固有の特性を映し出しながら、世界共通の住宅課題に応えている。洗練された高層住宅から、サステナブルな地域コミュニティに至るまで、それぞれの建築は「場所」と「文化」の精神を体現している。狭小の都市区画で工夫を凝らした住宅もあれば、数百世帯に手頃な住まいを提供する大規模開発もある。多様な現代の暮らしに正面から向き合う、革新的な設計ソリューションがここに集約されている。
今回は、世界最大級の建築アワード「Architizer A+Awards」より、最新の住宅プロジェクト部門受賞作をピックアップした。
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Case 01:Loma Sagrada House(設計:Salagnac Arquitectos|コスタリカ・ノサラ)
▶︎ 受賞:A+Awards 審査員賞|プライベートハウス XL(6000 sq ft 超)


〈Loma Sagrada House〉は、土地を再生的に扱う建設プロジェクトへと転換し、従来の環境負荷の高い開発とは対照をなすものとなった。建設において土壌の健全性を維持するため、地盤の動かし方を最小限にし、杭工事を抑えたことで、建物周辺の自然環境は迅速に再生した。環境配慮型の建築群として、南斜面に配置されたメイン棟は夏季の強風を避け、豊かな植生による微気候が内部温度を自然に調整する。
設計は35度の急傾斜を活かし、基礎への負荷を抑える三角形の構造と、効率を最大化する木造100%の躯体を採用。丘の頂部には公共エリアが設けられ、パノラマビューを望むプール、ヨガルーム、キッチンなどが木造モジュール構造に沿って配置される。自然換気、日射遮蔽、電磁波対策の配線、フリッカーフリー照明、再利用水システム、太陽光発電、化学物質を用いない浄水・プール設備など、多様な環境技術を統合している。
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Case 02:Madrone Ridge(設計:Field Architecture|カリフォルニア・ソノマ郡)
▶︎ 受賞:A+Awards 審査員賞|プライベートハウス(4000–6000 sq ft)


ソノマ郡の谷を見下ろす〈Madrone Ridge〉は、敷地との深い結びつきをもつ若い家族のために、細部まで配慮された住宅である。自然環境に着想を得たデザインは、銅板で包まれた3つのパビリオンをブリーズウェイでつなぎ、景観と滑らかに一体化する。
銅板が選ばれたのは、耐久性・低メンテナンス性に加え、周囲のマドロナ樹との視覚的な調和にある。パンチング加工を施した庇は夏期の強い日差しを遮り、構造体と整合したラインを形成する。銅の外皮は木立の光と影を住空間に取り込み、感覚的な豊かさを高めている。
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Case 03:Pacific Landing Affordable Housing(設計:Patrick TIGHE Architecture|カリフォルニア・サンタモニカ)
▶︎ 受賞:A+Awards 人気投票|アフォーダブルハウジング


Pacific Landing は、障がいのある人々や低所得者のために設計された、100%アフォーダブルな混合用途の Net Zero・LEED プラチナ住宅プロジェクトである。旧ガソリンスタンド跡地に建つ4階建ての建物は、37戸の住宅を提供し、象徴的な「家」のイメージを再構成したデザインを採用。ボリュームを細かく分節し、それらの間に緑化スペースを挟むことで、環境への親和性を高めている。
共用部は建物全体に分散配置され、屋上テラスからはサンタモニカ山地や太平洋の眺望が広がる。節水、健康素材、空気清浄、雨水管理において高い性能を達成し、全電化システムや高効率ヒートポンプを採用するなど、持続可能な生活の実現を追求している。
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Case 04:Upper House(設計:KOICHI TAKADA ARCHITECTS|オーストラリア・サウスブリスベン)
▶︎ 受賞:A+Awards 人気投票|マルチユニットハウジング(高層・16階以上)


サウスブリスベンに位置する〈Upper House〉は「Koichi Takada Architects」による全33階・188戸の集合住宅である。ネイティブのモートンベイ・イチジクの樹形に着想を得ており、自然との結びつき、質の高いデザイン、居住者のウェルビーイング、環境的サステナビリティを重視する、マルチレジデンシャルデザインの新たな時代を示す建築となっている。天然木のパーゴラやトロピカルな屋上オアシスを設え、ブリスベンの自然美とリラックスしたライフスタイルを建築的に讃えている。
最上部2フロアには「Upper Club」と呼ばれる2層吹き抜けのウェルネスクラブと居住者施設が配置され、コミュニティ形成とウェルビーイング向上を目的に設計されている。インフィニティプール、スパ、サウナ、フィットネスクラブ、ヨガスタジオ、ボードルーム、ワーク・フロム・ホーム機能、ラウンジバー、シネマ、プライベートダイニング、ワインセラーなど多様なアメニティを備える。オーストラリア・グリーンビルディングカウンシルの5つ星 Green Star 評価を取得している。
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Case 05:Lambkill Ridge(設計:Peter Braithwaite Studio|カナダ・テレンスベイ)
▶︎ 受賞:A+Awards 人気投票|一般住宅(XS < 1000 sq ft)


〈Lambkill Ridge〉は、当地に自生する Sheep Laurel(羊月桂)にちなんで名付けられた、自然愛好家の4人家族のための週末住宅である。細長いボードウォークを軸に、ほぼ同一形状の2つのボリュームをミラー配置しており、アクセスロードから自然歩道へと続く動線を形成している。建物は森林の地盤から持ち上げられ、樹冠の高さに沿って配置されているため、ロフト空間から荒地や海の眺望を得つつ、自然環境の健全な保全を可能にしている。
二段構成の階段とボードウォークのアプローチからは、2つの暗色ボリュームが控えめにフレーミングする小さなトレイルヘッドが見える。最初のボリュームは「スリーピング・パビリオン」で、メカニカル設備、バスルーム、スリーピングロフトを含む。続く「リビング・パビリオン」にはホワイトオークで仕上げたキッチネット、薪ストーブを備えたメインリビング、ゲストロフトが収められる。外観は周囲のランドスケープと強いコントラストを成しながら、内部には地域産のヘムロック材を粗挽きで使用し、軽量木造フレーミング技術を示している。
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Case 06:Front Street Affordable Housing Phase I(設計:Utile, Inc.|メイン州・ポートランド)
▶︎ 受賞:A+Awards 人気投票|アフォーダブルハウジング


Utile はポートランド住宅公社(PHA)と協働し、Back Cove 地区近くの2ブロックにわたる既存住宅団地を再開発する〈Front Street Development〉を手がけた。本計画は、全113戸の低層集合住宅を段階的に整備するもので、既存のPHA住宅を置き換えつつ、新たな建物とオープンスペースを周辺街区の構造へと統合することを目指している。第1期では60戸を提供し、現居住者の再入居に加え新たな世帯にも対応する。周辺のスケールに合わせ、デュープレックス型を中心に3~5ベッドルームのユニットを多く含んでいる。
この再開発は、Utile が策定した PHA の住宅開発戦略ビジョンに基づくもので、1000戸を超えるアフォーダブル住宅の成長を段階的に導くことを目標とする。同戦略には、概念設計や資金戦略が含まれており、南メイン州で高まるアフォーダブル住宅の需要に創造的に応える枠組みを提示している。
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Case 07:Barcelona House(設計:Strom Architects|スペイン・バルセロナ)
▶︎ 受賞:A+Awards 人気投票|一般住宅(4000–6000 sq ft)


バルセロナ郊外の丘陵地に建つ本住宅は、地中海沿岸の眺望を180度見渡し、背後には松林が広がる立地を有する。建築面積に関する厳しい地域規制により2階建てが必須となり、急斜面を活用して断面的な段差を設けながら、居住空間を敷地全体に展開している。上階を丘の頂部に配置することで、外観上は平屋のように見せつつ、斜面に沿って下階を巧みに埋設している。
ダイナミックな眺望が計画を大きく方向づけ、主要なリビング空間と主寝室を上階に配置して景観を取り込んでいる。6mのカンチレバーをもつ大屋根は、全面開口のガラスファサードに日射遮蔽を与え、通年で快適な屋外生活を可能にする。1階はフリープランとし、独立したキッチンブロックと屋内のオリーブの木によって緩やかにゾーニング。床から天井までのガラス開口は全面的に引き込み可能で、インドア・アウトドアがシームレスに連続する。L字型のインフィニティプールはリビングの2面を囲むように配置され、地中海の風景との一体化を生み出している。
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Case 08:Mississippi Loft(設計:PKA Architecture|ミネアポリス)
▶︎ 受賞:A+Awards 人気投票|アパートメント


海外赴任から帰国したクライアントが、ミシシッピ川に面した歴史的建物内の「未改装のシェル」2区画を取得したことから計画が始まった。この7階建て煉瓦建築は1879年の建設で、小麦粉工場、ラグジュアリーホテルを経てコンドミニアムへと用途を変遷してきた。内部には構造柱や機械スタックなどの既存要素が多数残存しており、通常は「ほぼ施工不可能」と見なされる難条件の空間であった。
設計チームは、建物の豊かな歴史を生かしながら、パブリックとプライベートの空間バランスを図り、ガーデンやアートギャラリー/スタジオを含む構成を目指した。ダブルハイトの煉瓦壁を基盤とし、スチール製のメザニンがギャラリーとスタジオを収め、下階に親密なプライベートスペースを形成する。クライアントの欧州ヴィクトリア建築への嗜好から、1851年ロンドン万博のクリスタルパレスを想起させるガラス張りのソラリウムを設け、スチールと手吹きガラス・ロンデルで構成している。
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Architizer Magazine
English text: Eric Baldwin
About Eric Baldwin:Based in New York City, Eric was trained in both architecture and communications. As Director of Communications at Sasaki, he has a background spanning media, academia, and practice. He's deeply committed to trying as many restaurants as possible in NYC.
※本記事は、Material Bankのグループメディアである「Architizer(アーキタイザー)」の記事を翻訳・編集したものです。実際の英文記事はこちら。

