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ブランドセレクション

        2025年10月30日

        Post Industrial Innovation|製鉄所を再生した、次世代テクノロジー拠点

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        ── 産業の記憶を未来へ、製鉄所の外殻が新しい都市の象徴に

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        ピッツバーグのヘーゼルウッド地区は、モノンガヘラ川のU字状のカーブに沿うように位置し、かつてこの都市の製鉄帝国の中核を担った地域である。

        その川沿いに立つ「ミル19(Mill 19)」は、全長約3分の1マイルにおよぶ細長い旧工場建築であり、かつてLTVコーク工場が操業していた。1997年の閉鎖をもって、市内で稼働していた最後の製鉄所となった。

        今日、ピッツバーグがロボティクスやAIテクノロジーの産業拠点として再生しつつある現状は、このミル19の大規模リノベーションに象徴されている。設計を手がけたのは MSR Design である。「この建物は、他にはない存在感を敷地全体にもたらす象徴的な存在です」と語るのは、開発主体である RIDC(Regional Industrial Development Corporation)代表 Don Smith(ドン・スミス)氏。

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        もっとも、荒廃した工業遺構を再生し、人々が集い働く場所に転換するには、楽観的な視点が必要だったという。Smith 氏によれば、再生過程では鉛塗料やアスベストの除去、地下トンネルの充填、厚さ18インチのコンクリートスラブの撤去と再利用など、広範囲にわたる環境修復が行われた。そのスラブの100%が砕かれ、ランドスケープや公共空間の再構成に再利用されたという。

        「もともとここには“建築”と呼べるものは何もなかった。あったのは溶鉱炉、操車場、そしてスラグの山でした。しかし、その荒廃のあり方こそが私たちには魅力的だったのです」と、MSR Design の共同創設者 Tom Meyer(トム・メイヤー)氏は振り返る。

        かつての製鉄所に残されたのは、いまやその外殻だけ。屋根と外壁はすべて撤去され、現在はスチールフレームの構造体が米国内最大規模の単一傾斜型太陽光発電アレイを支えている。年間発電量は2メガワットに及ぶ。その外骨格の内部には、高度製造やテクノロジー関連のテナント向けに設計された3棟のオフィスビルが新たに構築された。

        2019年に竣工した最初の「ビルディングA」は、カーネギーメロン大学のManufacturing Futures Instituteおよび公民連携によるAdvanced Robotics for Manufacturing Institute(ARM)が入居している。翌2020年に完成した「ビルディングB」には、自動運転車の開発企業Motionalが拠点を構える。そして、最終フェーズである「ビルディングC」は今年中に竣工予定で、複数のテナントが入るより一般的なオフィス棟として構成されている。各棟の間をつなぐ通路やデッキは敷地の透過性を高め、次世代型の産業キャンパスとしての開放性と連続性を形成している。

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        ── 産業遺構を超えた地域再生と、環境共生のランドスケープ

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        リノベーションの向性は複数検討されたが、エネルギー集約的な重工業用途は排除され、また単なる倉庫や低密度の利用では地域の再生に寄与しないと判断された。

        「この新しい開発が、どのように既存コミュニティとつながっていけるのかが最大の課題でした」と語るのは、MSRのプロジェクトマネージャーで建築家の Jeryl Aman(ジェリル・エイマン)氏。

        ピッツバーグをはじめ多くのラストベルト都市と同様に、産業の撤退は人口の減少と経済的疲弊をもたらした。ミル19の再生は、単にテック企業を誘致するだけでなく、地域に開かれ、再生を促す場所である必要があった。

        「RIDCは、ピッツバーグの未来にふさわしい、持続可能なコミュニティづくりを掲げました」と Meyer 氏は述べる。

        ミル19は、建物と公共空間の両面から構成される極めてエネルギー効率の高い開発である。敷地内での燃焼は一切行われず、太陽光パネルが電力の大部分をまかない、ガラス屋根を通して柔らかな自然光を採り入れる。中央の機械室は冷暖房用の共通水循環システムを供給し、雨水は敷地内で回収されて貯水槽に蓄えられるか、または建物西側を走る幅12フィートの水路へと導かれる。水路に不透水性のライナーが設けられ、汚染土壌への浸透を防ぎながら北側の調整池へと流れる仕組みだ。

        さらに、解体材の再利用もプロジェクトの重要な柱である。バンカーブロック、スライドドアの枠、鉄道レール、クレーンなどが再利用された。なかでも特筆すべきは、前述のコンクリートスラブの再活用である。ランドスケープ設計を担当した TEN x TEN Studio の共同創設者 Maura Rockcastle(モーラ・ロックキャッスル)氏は、これを「ラブル・ストラテジー(rubble strategy)」と呼ぶ。砕かれたスラブは大小さまざまなサイズで敷地内に再配置され、歩道の縁取りや公共空間の構成要素となった。細かな破片は「ルーデラルマルチ(ruder mulch)」として植生を誘発し、強靭な樹木や多年草、野花など約30種以上の“環境撹乱に適応する植物”が根を下ろす。

        Rockcastle 氏はこのミルの彫刻的なフォルムを「建築というより、むしろランドスケープの一部」と捉えている。実際、3棟の新しいオフィス棟はこの巨大な外殻の中に控えめに収められており、主役はあくまで敷地そのものである。

        「私たちはこの場所を再び“生産的な場”に戻したいと考えました。それを環境的にも、社会的にも、経済的にも持続可能なかたちで実現することが重要だったのです」と Smith 氏は語る。

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        今年4月、ミル19はAIA(アメリカ建築家協会)のCommittee on the Environmentより、「COTE Top Ten Award」を受賞した。デザインの卓越性と環境性能の両立を示す革新的プロジェクトとして、高く評価されている。



        プロジェクトチーム

        設計:MSR Design
        デベロッパー:RIDC
        環境デザインコンサルタント:Atelier Ten Inc.
        構造・設備設計:Bala Consulting Engineers
        土木設計:Lennon, Smith, Souleret Engineering Inc.
        グラフィックス:MSR Design
        ランドスケープ:TEN x TEN Studio
        照明デザイン:Gallina Design LLC
        アソシエイトアーキテクト:R3A Architecture
        テクノロジーコンサルタント:True North Consulting Group
        コスト管理:Project and Construction Services
        外装システム:Morin, Kingspan, Centria, Metal Sales
        ガラス:Vitro Architectural Glass
        窓:EFCO
        昇降機設備:Schindler, TKE




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