
── 感覚をデザインするゾーニング

通信大手ヴァージン・メディア O2 の新本社は、2021年の両社合併後、初となる大規模なオフィス投資であり、その設計を担ったのが、今年設立60周年を迎えるGenslerである。求められたのは、超高接続性とインクルーシブな働き方を実現するワークプレイスの構築であった。
ロンドン・パディントン地区に位置する新拠点は、約7,600平方メートル(81,750平方フィート)、地上階を含む6フロアで構成され、多様な部門をひとつに結びつけるとともに、同社のスローガン「See what you can do(あなたにできることを見つけよう)」を体現している。
設計チームには、空間の雰囲気を整えるだけでなく、ブロードバンドやモバイルネットワークといった、通常の製品展示では視覚化しにくい同社の主要事業をいかに表現するかが求められた。Gensler ロンドンのデザインディレクター、Megan Dobstaff(メーガン・ドブスタッフ)は次のように述べる。
「形のないサービスを、実際の空間の中でどう生き生きと表現するか。それが最も大きな挑戦でした。」
従業員によるフォーカスグループや、アクセシビリティおよびDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)のコンサルタントとの協働を通じて、このオフィスにはハイブリッドかつ柔軟な働き方を可能にする仕組みが不可欠であることが明らかとなった。利用者が多様な環境で業務を遂行できるよう、空間全体にさまざまなワークモードを支える解決策が組み込まれている。
各フロアには異なるテーマが設定されており、それぞれがVirgin Media O2の企業理念と共鳴し、同時に従業員の共感を呼び起こす文化的要素を表現している。ストリーミング、ゲーム、ダンスなどのモチーフが随所に取り入れられ、素材、照明、色彩の多様な組み合わせによって空間に活力を与え、コラボレーションを自然に誘発する設計が施されている。

── ブランドカラーと空間の表情


これらのユニークなゾーンを形成するにあたり、デザイナーたちは単なるサイン計画を排し、建築的視点から「感覚のプロファイル」を空間に織り込む手法を採用した。たとえばスポーツをテーマとしたフロアには、観客席を思わせる段状のシーティングや芝生を模したカーペットが敷かれている。音楽フロアでは黒と白の要素がピアノの鍵盤を連想させる。また9階には大規模から小規模まで多様な集まりに対応できる空間が設けられており、コーポレートイベントに用いられるアリーナのほか、食事や短い打合せを行うカフェ、静かな作業を求める人々に適したライブラリーが配置されている。
ブランドカラーは、ドブスタッフが「コントロールされた詩的な方法」と表現するアプローチで巧みに空間へと散りばめられている。深みのあるシグネチャー・レッドとブルーは主要なワークゾーンに配され、来客や従業員を迎えるラウンジや非公式なホスピタリティ空間ではより淡いトーンに切り替わる。さらに、柔らかなグリーンと濃いグリーンが交互に用いられ、インテリアに生き生きとした表情を与えるとともに、随所に配置された植栽を引き立てている。


── 働きやすさと持続可能性の両立

家具計画においても、多様な体格や身体能力に配慮がなされている。従来型デスクに加え、トレッドミルデスクや昇降式カウンターを導入することで、背の高低にかかわらず快適に作業ができる環境を整備した。会議室は車椅子利用者がスムーズに移動できるよう十分なスペースを確保している。
また、人と地球のウェルビーイングも重要なテーマであり、持続可能な手法の導入によっておよそ630トンの炭素排出を削減した。こうしたデザインは視覚的なインパクトにとどまらず、今日そして未来の働き手に持続的な影響を与えることを目指している。「私たちは“体験の目的地”を創り出しました。これによって従業員の行動が変化し、働き方が進化していくことを期待しています」とドブスタッフは語る。



