
── 自然に寄り添う贅沢、
ユタ州の山岳地に建つ新基準の邸宅──
ゲーテッド・コミュニティは、建築面での評価はあまり高くないかもしれない。時代遅れで誇張的な住宅群は、正直なところ周囲の環境とのつながりも希薄と言える。そんなステレオタイプに異を唱えようと、ユタ州パークシティのプライベート・エンクレーブで開発を手がける「The Iluminus Group(イルミナスグループ)」は「CLB Architects(CLBアーキテクツ)」に設計を依頼し、近隣の邸宅と同じく大規模でありながら、よりシンプルでタイムレス、かつ優雅な住まいを実現し、アウトドア志向の購入希望者にアピールすることを目指した。
「この地域で、あえて“考え抜かれたデザイン”の新たな基準を築くのが目標でした。」と語るのは、CLBのパートナーで建築家のEric Logan 氏。そうした理念を体現しながらも、屋内クライミングウォール、スポーツコート、ボウリングレーン、スパといった豪華設備も完備する施設を作り上げた。同時にCLBは、それらが必ずしもデザインの質と矛盾するものではないということも示した。
ワサッチ山脈の急斜面に広がる4.9エーカーの敷地。トウヒやモミ、アスペンの木々が茂り、標高はおよそ2,600メートル。パークシティ・マウンテン・リゾートや渓谷を一望する最高のロケーションだ。ワイオミング州のジャクソンホールとモンタナ州のボーズマンを拠点とするCLBは、長年にわたって山岳地における高級住宅を手がけてきたスタジオで、土地の自然美に敬意を払う姿勢を貫いている。
「その場所とつながるという考えを、私たちは非常に大切にしています。西部の素晴らしい土地で仕事をする機会に恵まれてきましたが、私たちが壊してしまっては意味がない。時には『もう何もしないで公園にすべきでは。』と思うこともあります。ただ、開発されるのは避けられないので、私たちはその中で最高の仕事をするだけです。」と Logan 氏は語る。

1. 暖炉脇のラウンジスペースには、Pierre Augustin Roseによるラッカー仕上げのコーヒーテーブルが設置され、奥のダイニングには、1968年に John Stuart がデザインした真鍮製のヴィンテージ・パーソンズチェアが並ぶ 2. 玄関ホールには Semeurs d’Étoilesによる吹きガラスのシャンデリアが吊られている。窓際のブリッジは、建物の二つのウィングをつなぐ 3. 書斎の壁面には、Newell Studioによる特注の染色シープスキンパネルを使用 4. オーク材の階段の足元には、かつてのリフトチェアを再利用して設置。階段まわりはプラスター仕上げで構成されている 5. 書斎には、Bourgeois Boheme Atelierのシャンデリア、Starkのシルク混合ラグ、Charles Kalpakianによるアームチェアが落ち着いたアクセントを添えている
── 森と対話するL字型の大邸宅、
自然に寄り添う設計思想──
パークシティのこの敷地で、CLBが目指したのは、広大なプログラムに対応しながらも、できる限り建物をコンパクトにまとめ、森の中に不必要に広がらないようにすることだった。
「Monitor’s Rest(モニターズ・レスト)」と名づけられたこの住宅は、斜面に寄り添うようにL字型に設計されている。上方からアプローチすることで、ゲストはまず中庭に迎えられ、約1,670平方メートルの建物がそれほど大きく見えないよう配慮されている。「中庭は空を眺め、方向感覚をつかむための静かな空間をつくると同時に、屋内に自然光を取り込む役割も果たしています。」と、Logan 氏は説明する。

1. キッチンにはMolteniの調理レンジとWood Stone Home製ピザ窯を備え、プロ仕様の機能美を実現した 2. スポーツコートには、クライミングウォールも設置され、アクティブな日常をサポートする 3. 廊下には、銅製の天井とブロンズ×ウールの羊の彫刻が静かな遊び心を添える。収納ベンチはJake Whillansによるもの 4. ゲスト用バスルームには、Cléのタイルをアクセントに、統一感のある床とカウンターは大理石仕上げ 5. ロッカールームの天井にはヴィンテージ・スキーを敷き詰め、山のアクティビティへの期待感を高める 6. ボウリング場には、Fromentalのコラージュ&手描きの壁紙を採用。

“You connect with the environment, projected out onto the tree line so you sit with the forest”
訳:「木立の先端に張り出すように設計されていることで、まるで森と一体となって過ごしているような感覚が生まれます。」
── 遊び心と洗練が共存する空間構成──
窓の前にはスリムな鏡が吊られており、歯を磨きながらも森の景色を楽しめる。独立型の木製バスタブが、静けさに包まれた時間を演出する。壁と床に使用された石灰岩は、継ぎ目の存在を感じさせないほどシームレスだ。「石の“縞模様(ベイン)”に沿ってカットしているので、パネルごとの境界が見えないのです。」と Kennedy 氏は説明する。
隣接する寝室もまた、抑制の効いた設計となっており、オーク材のパネル張りの壁に、特注のリード加工を施したベッドフレーム、レザーの吊り椅子、ジオ・ポンティのブラスミラーがさりげなく個性を加える。

1. 各ゲストルームは、それぞれテラスへと直接アクセスできる設計に 2. 外装は焼杉の杉材とクロアチア産ライムストーンで構成されており、建物は中庭を通じてアプローチされている 3.4.5. 主寝室には、Blackman CruzのPodレザーハンギングチェアが置かれ、リラックス感を演出。木製の自立型バスタブが空間の中心となり、壁と床にはオーシャントラバーチンを使用 した寝室から繋がる開放感のあるバスルームも美しい。さらに、Jennifer Prichard によるセラミックアートが、レザーとライムストーンのヘッドボードの上に飾られている
温もりと親密さを備えたこの空間は、子どもたちのお泊まり会にもぴったりだが、浮遊感のある暖炉やローズウッドのテーブル、モロッコ産のMrirtのラグが、大人にもふさわしい上質さを添えてくれる。このタワーも、敷地全体と同様に、遊び心と洗練が絶妙なバランスで共存する空間。パークシティの街並みに、新たな視点をもたらす存在となっている。
https://www.materialbank.jp/all/curated-collections/hotel-top20-jan2024
INTERIOR DESIGN Magazine, Fall 2022
English text: Rebecca Dalzell
Photography: Kevin Scott