
訳:このパビリオンは、店舗を訪れるゲストをブランドの持つ世界観や香り、そして自然の中に
包み込み、伝統的でありながら街と対話するような空間を生み出す。(所在地:メキシコシティ)
五感で包み込まれるような体験
「Xinú(シヌゥ)」は、メリダやサン・ミゲル・デ・アジェンデにも店舗を構える、メキシコのパフューマリーブランド。このブティックのデザインを手がけたのは、ブランドと長年コラボレーションを続けてきた地元の建築・デザイン事務所「Cadena Concepts」と 「Esrawe Studio」。彼らが生み出したのは、単なるショップではなく、都市の中心に佇むサンクチュアリ(聖域)のような空間だ。
「このプロジェクトの着想は、フアレス地区に “庭を贈る” というアイデアから生まれました。」と、Esrawe Studio のHéctor Esraweは語る。
この没入感あふれる体験の創出には、Esrawe が建築・空間設計を担当し、Ignacio Cadena がストーリーテリングとディスプレイデザインを手がけた。

Left: 店舗外観 | Right: 店舗室内入口
Xinú とは、メキシコの先住民族による声調言語であるオトミ語で「鼻」を意味する。その名の通り、このブランドはアメリカ大陸に自生する芳香植物からインスピレーションを受けている。今回紹介する店舗もまた、店舗を訪れるゲストを五感で包み込むような体験へと誘う。
自然と一体化する空間デザイン
約232㎡(2,500平方フィート)の円形パビリオンは、FSC認証※を受けたペルー産トルニージョ材の積層構造で構築され、Xinú のサステナビリティへのこだわりが体現されている。また、ブランドオリジナルのフレグランスボトルも、管理された環境で育ったウォールナット材と、地元で製造された吹きガラスが使用されている。

1: フィカスやパキラなど、日本でも馴染みの大ぶりの木々に覆われたエントランス 2: 店舗内のユニークなドデカゴン(12角形)の空間に沿って置かれた什器は、ウッドやゴールドが香水をより引き立てる 3: 美しいパッケージングのプロダクトがぴったりと収まる棚は、緑溢れるエントランスを思わせる作り
さらに、この空間に設置された垂直ルーバーは全面開閉が可能で、周囲の自然とシームレスにつながる設計に。ディスプレイ棚やショーケースを支える構造でありながらも、風や光を自由に取り入れる。円形のレイアウトは、ゲストが店内を回遊する際に、外庭と店内のプロダクトを有機的に結びつける役割を果たしてくれる。
「この空間は、ハンドクラフトならではのラグジュアリー感はもちろん、自然、そして香りの芸術が織りなすシナジーを生み出します。」と、Cadena は語る。Xinú のブティックは、単なる店舗を超え、都市の中に息づく静謐な楽園として存在しているとも言える。
※FSC認証(Forest Stewardship Council 認証)とは、森林の管理や加工・流通過程が適切に行われていることを認証する国際的な制度。
INTERIOR DESIGN Magazine, August 2024
English text: Stephen Treffinger
Photography: ALEJANDRO RAMÍREZ
Logo image: xinuperfumes.com