
タイルカーペットの常識を覆す!
「水平循環型リサイクル」という仕組みづくりへの挑戦。
── 日本最初のタイルカーペットメーカーとしての誇りと責任
カーペットや床材、カーテン、壁装材など幅広い内装材を開発・製造するSUMINOE GROUP(以下、SUMINOE)。あらゆる商材を生み出す一方で、社会課題である環境に配慮したものづくりに対し、業界のなかでもいち早く半世紀前から取り組みを始めた。製造過程における環境負荷から、製品の原料、その再利用に向けた仕組みづくりまで、その理念は体現されている。オフィスや商業・公共空間などに広く用いられている SUMINOE のタイルカーペットにおいては「水平循環型リサイクル」を標榜する「ECOS®(エコス)」シリーズの取り組みが特長だ。
長年にわたって SUMINOE での製品開発・製造に携わり、同じく環境配慮型の社内体制づくりの歴史を見てきた住江テクノ 取締役・石井宏明氏に、ECOS®を通して見える SUMINOE GROUP の理念、さらにその先に見据える次代のものづくりへの思いを聞いた。

▲ 住江テクノ 取締役・石井宏明氏。親会社である住江織物株式会社(現:SUMINOE株式会社)への入社後、奈良工場で長い間勤務してきた
── 環境対応の先駆けとしての歩み
「 SUMINOE が環境を意識した製造に注力し始めたのは50年以上前、高度経済成長期にある日本において公害問題が顕在化した頃です。1971年に開設された奈良工場は、社会における住宅産業の拡大とあわせて増えていたカーペットなどへの需要に応える製造拠点として、そして、環境保全を目指す無公害型の工場としてスタートしました」
同工場では排水や煤煙処理に配慮し、環境への負荷を低減するための製造工程の構築を推進。それ以降の工場運営や製品そのものにもその視点が活かされてきた。
「製品の製造においては、原材料のリサイクルにも早い段階から着手してきました。例えば、カーペットをつくる際に出る端材を粉砕し、再度原料の一部に取り入れるなど、内装材のメーカーとしては先見性のあるものづくりを続けてきました。また、当社では、1980年に日本で初めてタイルカーペットの生産を始めましたが、そのバッキング材(裏地)についても1990年代初頭から、ECOS開発は2000年代に入ってから取り組んでいます」

▲ 1971年に開設された奈良工場は、当時の社会における公害問題を受け、環境保全を目指す無公害型の工場として計画された
バッキング材には主にPVC(ポリ塩化ビニル)が用いられている。1990年代のダイオキシン問題においては、発生源となるPVCをオレフィンに置き換えた製品を開発するなど、企業としての対応も迅速であった。現在は、PVCの安全な処理方法が確立されたこともあり、PVCを用いたものがメインとなっているが、時代の要請にあわせた製品開発の裏には様々な苦労がある。
「新しい素材を用いることや、それに合わせた製造方法の考案、製造ラインの構築などには、当然ながら時間とコストがかかります。また、オレフィンを用いた製品は、従来の製品よりも価格が1.3倍ほどになる場合もあり、お客様になかなか受け入れてもらえませんでした。現在であれば、特別な技術を用いたエコな製品は、ある程度コストが上がることへの理解も進んでいますが、当時はまだまだ社会全体の環境への意識は高くはなく、当社の動きが早すぎたとも感じています」

▲ SUMINOE ブランドのタイルカーペットには、すべてバッキング材に再生材が採用されている
── SUMINOE 独自の「水平循環型リサイクル」の確立
2000年代に入り、ようやく建材・内装材における環境に配慮した製品づくりの機運が高まっていくなかで、SUMINOE 内でそれまで取り組んできたエシカルなものづくりへの姿勢を、企業の価値として形にするべく、リサイクルなどを見据えた製品開発が始まり、2011年のECOS®シリーズの発売につながっていく。
「時代と共に技術が進歩し、様々な製品が世の中で生み出される中で、自分たちの会社の強みを見直していった時に、やはり環境保全に対する取り組みは大切な柱でした。タイルカーペットについて、どうすれば環境負荷の低減につながるかを考え、新しいバッキング材のリサイクル方法に向き合っていきました。ただ、かつての環境配慮型の製品開発の経験もあり、会社からは『品質は同等以上』でありつつ『コストもそのまま』という2つの使命を受け、そんなことができるのだろうかと、頭を悩ませながら開発に取り組んでいったのを覚えています」
ECOS®シリーズの最大の特長は、水平循環型のリサイクルを可能にしている点。そのバッキング材の原材料の約8割には、オフィスの解体などで出る使用済みのタイルカーペットのPVCを用いている。回収されたカーペットは、産業廃棄物の再生に強みを持つリファインバースグループが再資源化。その素材で SUMINOE のタイルカーペットをつくることで、同一製品間で素材が循環する仕組み「ECOS® Recycle System」が機能している。

▲ 同一製品間で素材が循環する「ECOS® Recycle System」の流れ
「リサイクル素材を原材料のうちどの程度の割合まで混合させていけば良いのか、耐久性や表面の糸との相性など、バッキング材としての品質を保つための検証を重ねていきました。また、タイルカーペットは輸入製品も多くあるのですが、回収し再資源化するものは、当社製品以外であれば、製造の背景がある程度把握できる国内メーカーのものに限っています。そして、タイルカーペットの再資源化をしてくれるリファインバースグループの存在はとても大きい。使用済みタイルカーペットのバッキング材はリサイクルPVCパウダーとして当社に入ってくる他、タイルカーペット表面の繊維は、別のリサイクル素材として活用されています。この他社との協働を始め、社内外の連携もECOS®の取り組みを後押しする重要なポイントと言えます」

▲ 回収された使用済みのタイルカーペットを、リファインバースグループで再資源化。バッキング材をリサイクルPVCパウダーとして、ECOS®へと循環する
ECOS®は、SUMINOE の新しいブランド価値を発信するものとして、製造側だけでなく、営業や販売チームとも協力しながら、ユーザーのニーズにも則した製品開発を進めていったという。
「製造会社が独りよがりで開発したものではなく、社会にとって価値のある環境配慮型の製品となっていくために、お客様の声を知るチームと話し合い、タイルカーペットの品質において何が優先されるべきかなどを細かく分析していきました。この連携によって、通常の製品開発が平均5年ほどの期間を要するのに対し、ECOS®は約3年という早さで開発が進みました。その推進力は、ECOS®の発売後も継続していて、お客様からの意見のフィードバックや製造側の研究の積み重ねにより、常により良い性能を持った製品へと進化を続けています」

▲ SUMINOE のタイルカーペットの表面をつくる工程
── 新たな素材開発と次代への展望
現在、SUMINOE ではOEMを除いて自社のタイルカーペットはすべて「ECOS® Recycle System」で生み出された再生バッキング材を使用している。つまり、SUMINOE のタイルカーペットを使うこと自体が環境負荷の低減に寄与することにつながるということだ。
「ECOS®の開発のテーマであったリサイクル素材を用いても『品質は同等以上』を目指してきたことで、タイルカーペットを使用いただくお客様には、目に見えてエコな製品であることは分からないかもしれません。しかし、だからこそ自然に受け入れてもらえる存在になっていると思います。この製品が一つの部署だけでも、一社だけでも開発することが難しいのと同じく、多くのお客様に使っていただくことで、この水平循環型リサイクルの輪が広がっていくと思っています。一方で、現在、国内のタイルカーペットの市場は2500万㎡~3000万㎡があるとされています。私たちもより多くの空間に、ECOS®が求められるように発信していかなければなりません。タイルカーペットの意匠性や機能性はもちろん、ECOS®としてのブランド価値をさらに高めていくための新しい素材開発にも力を入れています」

▲ 表面に用いる糸のリサイクルにも力を入れていると語る石井取締役
2023年には、バッキング材に加えて表面の素材にも再生材を使用した「ECOS NEO™(エコス ネオ)」シリーズを発売。その中でもEXシリーズは、再生材比率が8割を超える製品となっている。また、新たな試みとしてiDシリーズのiD-1500EPには、住江テクノ滋賀工場で製造している国内廃漁網を再生したナイロン糸を一部使用している。これらの素材開発による製品の進化は、SUMINOE のこれからのものづくりの姿勢を感じさせるものだ。
「当社が開発の理念に掲げている『K(健康)K(環境)R(リサイクル)+A(アメニティ:快適さ)』は、SUMINOE の歴史そのものでもあります。そして、そこから生まれる製品や取り組みは、業界の中でも価値のあるものだという自負があります。今後もECOS®を筆頭に、常に製品の品質向上を目指しながら、他社が追いつけないような、SUMINOE らしさを追求したものを生み出していきたいです」

メーカーのつくる責任と誇りから紡がれる SUMINOE の製品の数々。ECOS®シリーズを通して、社会課題である環境負荷の低減への可能性、次代のものづくりのスタンダードへとつながる思いの一端に触れてほしい。
